コインランドリー経営は儲かる?初期費用・利益・年収を2,000万円で計算した現実
深夜のロードサイド。閉まった店ばかりが並ぶなかで、そこだけ明かりがついている。中には誰もいない。洗濯機が回っているだけです。
コインランドリー経営が投資の話題にのぼるのは、たぶんこの光景のせいだろうと思います。人を雇わず、24時間動き、勝手に売上が立つ。実際、「表面利回り15%」という数字を掲げた資料も出回っています。
コインランドリーの本当の競合は、隣のコインランドリーではありません。ドラッグストアの棚に並んでいる、洗剤です。
使う理由が「自宅で洗えないから」である以上、自宅で洗える環境が少し良くなるだけで客は消えます。ドラム式洗濯乾燥機が10万円台まで下がったこと、部屋干し用洗剤の性能が上がったこと。この2つが、静かに市場を削っています。
そして検索結果に出てくる言葉は、もっと直接的です。「コインランドリー経営 現実」「儲からない」「赤字」「失敗」。始めた人が、後から調べている言葉という感じがします。
2,000万円を投じたら、年にいくら残るのか。公開されている数字を拾い集めて、最後まで計算しました。
目次
手元に残るのは、年105万円
20坪のテナント型を想定したモデルケースです。
| 初期費用 | 2,000万円 |
|---|---|
| 年間売上 | 720万円 |
| 年間経費 | 420万円 |
| 営業利益 | 300万円 |
| 表面利回り | 15.0% |
| 実質利回り | 5.25% |
| 投資回収期間 | 約19年 |
| 損益分岐点 | 月商47.5万円 |
| 手間 | 月20〜30時間 |
| 換金性 | 低い |
表面で見れば15%。ところが機器の更新費用と税金を引くと、5.25%まで落ちます。
消えていく10%の正体
(表面) 15.0%
引いた後 7.5%
金額 5.25%
営業利益300万円 − 機器更新積立150万円 − 税金45万円 = 年105万円。2,000万円に対して5.25%。
洗濯機の寿命は10年しかない
初期費用2,000万円のうち1,500万円は機器代でした。業務用の洗濯機・乾燥機は永久には動きません。実務上、10年程度で更新が必要になります。毎年150万円ずつ積み立てておかなければ、10年後に店を続けられません。
この150万円は利益ではなく、先送りされた費用です。帳簿の上では利益に見えますし、通帳の残高も毎月増えていく。それでも実際には未来の支払いに消えていくお金で、積み立てずにいると10年目に「儲かっていたはずなのに、機器を買い替える金がない」という状態になります。
そこから税金が引かれる
残った150万円には当然、税金がかかります。法人か個人か、他に所得があるかで変わりますが、仮に30%とすると45万円。手元に残るのは年105万円です。
52歳・退職金2,000万円の場合
Aさんの手元に入るのは、年105万円・月8.75万円です。年金を補う額としては悪くありません。
ただしAさんは、週2〜3回の清掃と集金のために店へ通います。月に20〜30時間、年間300時間ほど。定年後の時間の使い方としてこれを許容できるなら、成立します。
問題は10年後です。Aさんが62歳のとき、機器の更新で1,500万円が必要になります。積み立てていれば払えますが、積み立てていなければ、そこで店は終わります。そして投資額2,000万円のうち、10年間で回収できているのは1,050万円です。
Aさんが2,000万円を取り戻すのは、19年後・71歳のときになります。
2,000万円のうち、1,500万円は洗濯機
複数の事業者が公開している資料を突き合わせると、開業資金は総額2,000万〜2,500万円あたりが目安です。規模別では、15〜20坪の小型店で1,500万〜2,500万円、50坪以上の大型店で2,500万〜3,500万円ほど。
| 項目 | 金額 | 内訳 |
|---|---|---|
| 洗濯機・乾燥機 | 1,500万円 | 初期費用の75% |
| 内装・設備工事 | 500万円 | 給排水・ガス・電気 |
| 合計 | 2,000万円 |
初期費用の4分の3が機械です。建物や土地なら20年後にも価値が残りますが、洗濯機には残りません。この構成比が、実質利回りを押し下げる原因になります。
機器をリースにして初期費用を圧縮する、中古機器を使えば機器代を半分近くまで下げられる場合もある。ただし中古を選べば、そのぶん故障の頻度と更新の早さを引き受けることになります。
同じ2,000万円で、年商600万にも3,000万にもなる
20坪程度の標準的な店舗で、月商60万円程度が目安とされています。年間にすると720万円。
もっとも、この数字はあまりあてになりません。公開情報を見ると、月間売上は50万円から300万円まで開きがあります。
コインランドリー経営は、機械を買う投資ではありません。立地を買う投資です。機器の性能で差がつく余地はほとんどなく、周辺に単身世帯や共働き世帯がどれだけいるか、駐車場に入りやすいか、雨の日に人が来るか。ほぼそこで決まります。
売上の2割が、ガス代に消える
| 項目 | 月額 | 年額 |
|---|---|---|
| 家賃 | 15万円 | 180万円 |
| 水道光熱費 | 12万円 | 144万円 |
| 洗剤・消耗品 | 3万円 | 36万円 |
| 清掃・メンテナンス | 3万円 | 36万円 |
| 保険・通信・その他 | 2万円 | 24万円 |
| 合計 | 35万円 | 420万円 |
乾燥機はガスを大量に使うため、光熱費は売上の2割程度が目安とされています。売上が伸びれば光熱費も比例して増える構造なので、規模の経済が働きにくい。削る余地はほとんどありません。
月商47.5万円を切ると、静かに赤字になる
斜線部分が実質赤字の領域。年間経費420万円に機器更新の積立150万円を足して12で割ると、月47.5万円。平均的な月商60万円との差は、わずか21%しかありません。
近くに競合店ができる、ドラッグストアの安い洗剤で自宅洗濯に戻る人が増える、夏場に乾燥機の稼働が落ちる。このくらいで分岐点に届いてしまいます。「儲からない」という声が一定数あるのは、平均値と分岐点の距離が近いからでしょう。
年収は約100万円。人に任せると、ゼロになる
1店舗であれば、税引後で年100万円前後というのが現実的な水準です。これを「年収」と呼ぶかどうかは微妙なところで、2,000万円の資本に対するリターンと考えたほうが実態に合っています。
生活できる規模にするには複数店舗が必要です。3店舗で年300万円、5店舗で年500万円。ただし店舗が増えれば管理の手間も比例して増えるため、どこかで運営委託や人の採用が必要になります。
そして委託には、月5〜10万円のコストがかかります。年60万〜120万円。手元に残る105万円からこれを引くと、45万円から実質ゼロ。委託が成立するのは、複数店舗を持って委託費を分散できる場合か、1店舗あたりの売上が平均を大きく上回っている場合に限られます。
家賃が10万円下がっても、売上は20万円下がる
地方では家賃が安く、土地の取得費も下がります。月15万円の家賃が5万円になれば、年間120万円が浮く計算です。これは大きい。
ただし売上も同時に落ちます。コインランドリーの利用者は単身世帯・共働き世帯・布団を洗いたい層が中心で、この人口が薄い地域では月商30万円台になることも珍しくありません。
地方で成立するのは、家賃が下がるうえに一定の世帯密度がある郊外型の立地という、かなり限られた条件です。
使える税制と、始める前に確認すること
中小企業経営強化税制の対象になる場合があり、設備投資の即時償却や税額控除が使える可能性があります。ただしコインランドリー向けの設備が対象になるかは、機器の種類や申請時点の制度内容によって変わります。節税効果は初年度に集中するため、投資判断そのものを覆すほどの影響はありません。
公務員は法律で兼業が制限されており、規模によっては許可が必要です。会社員の場合は勤務先の就業規則によります。管理を委託して不動産賃貸に近い形にすれば認められるケースもありますが、判断は勤務先次第です。
開業してから問題になると、撤退コストを抱えたまま身動きが取れなくなります。始める前に確認しておくことです。
失敗は、この3つのどれか
平均値で計画を立てる
月商60万円は「平均」です。上は300万、下は30万。平均で計画を立てた時点で、5割の確率で下振れします。近隣の世帯構成と競合店を実地で調べずに、事業者のシミュレーションだけで判断するのが最も多い失敗です。
機器更新を積み立てない
月商が想定どおり60万円でも、更新費用を積み立てなければ10年後に詰みます。この間ずっと通帳の残高は増えているので、赤字であることに気づけません。気づくのは10年後、機器の更新費用を用意できないと分かったときです。
撤退できずに引き延ばす
月商が40万円まで落ちた場合、年商480万円から経費420万円を引いて年60万円。更新積立150万円を引けば年90万円の赤字です。それでも現金は毎月入ってくるため、「もう少し様子を見よう」と続けてしまう。借入があれば返済が重なり、撤退にも機器の撤去と原状回復で数百万円かかります。
入るのは決断だけ。出るのにはお金がかかる
株式やJ-REITなら、売りたいと思った日に売れます。コインランドリーはそうはいきません。事業譲渡はできますが買い手を探すのに時間がかかりますし、中古機器の売却価格は購入時の2〜3割程度まで落ちます。
5.25%なら、1万円でも取れる
コインランドリーの5.25%は、特別に高い水準ではありません。同じくらいの利回りを、1万円から手間をかけずに取れる選択肢が複数あります。
手間をかけずに、同じ5%を取る
2,000万円と月20〜30時間の労働を投じずに、同水準を取る方法があります。事業者ごとの実績・償還状況・遅延履歴を、同じ項目で並べました。
比較ページを準備中です土地を持っているなら、話が変わる
この計算をもって「やめたほうがいい」という話にはなりません。条件が変われば数字も変わるからです。
すでに土地や空き店舗を持っている人は、そもそも前提が違います。家賃180万円が消えれば営業利益は年480万円になり、機器更新と税金を引いても実質利回りは11%前後まで上がります。遊んでいる土地の活用先として見るなら、十分に候補に入る水準です。
これは FILE 002 コインパーキング経営(準備中) でも同じことが起きました。あちらは土地の有無で17.8%と赤字が入れ替わります。実物投資の利回りは、多くの場合「土地代を払うかどうか」で決まります。
事業として複数店舗を展開したい人も別です。金融商品では届かない規模の収益を作れる可能性がありますし、そもそもこれは投資ではなく事業になります。
逆に、手間をかけずに年5%が欲しいという目的であれば、2,000万円を投じてコインランドリーを持つ理由は見つけにくいと思います。同じ利回りを、もっと少額で、もっと手軽に得られるからです。
利回りの数字だけで商品を比べると、判断を誤ります。初期費用がいくらか、どれだけ手が取られるか、やめたいときにやめられるか、失敗したとき何が残るか。そこまで並べて、ようやく同じ土俵になります。
次に測定するもの
算定根拠
- コインランドリー経営の初期投資・費用について徹底解説(HOME4U土地活用)
- コインランドリーの収入はいくら?(HOME4U土地活用)
- コインランドリー経営で採算は取れる?(TOSEI)
- コインランドリー経営の初期費用はいくらかかる?(TOSEI)
- コインランドリー経営は儲からない?(三井のリパーク)
- コインランドリー経営は儲かる?(マネーフォワード クラウド会社設立)
- コインランドリー経営の年収はいくら?(エレクトロラックス)
本記事の数値は上記の公開情報をもとに独自に試算したモデルケースで、立地・規模・運営方法により結果は大きく変わります。記事中の人物は実在しません。投資判断はご自身の責任でお願いします。